最高裁判所第一小法廷 昭和34(オ)143 判決
主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理 由
上告代理人弁護士民繁福寿の上告理由(一)について。
しかし、原判決は、所論主張に対し判断を与えていることは、判文上明白であつ
て、所論の違法は認められない。
同(二)について。
訴外D会社は、昭和二九年一月九日当時訴外E銀行F支店に約四百万円の債務を
負担していたが、とくに同支店からその債務の支払を督促されたこともなく、被控
訴人(上告人)からの送金を同支店におけるD会社の当座預金に振り込んでも債務
の弁済に充当されたような例がなかつたので、控訴人(被上告人)はこのようなこ
とを予想だにしなかつたこと、また、その当時同支店との当座取引は継続しており
同支店においてこれを抜打的に解約するがごとき気配も察知されなかつたものであ
ることは、挙示の証拠関係で肯認できないことはない。そして、右事実その他原審
認定の事情の下において、控訴人が右訴外会社の代表取締役として被控訴人からの
送金を前記銀行の当座預金口座に振込んだことは、同会社に対する関係において任
務を懈怠したものといえないのみならず、被控訴人の被つた損害の発生について控
訴人に商法二六六条ノ三所定の悪意又は重大な過失があつたものとはいえない旨の
原判決の判断はこれを正当として是認することができる。されば、原判決には所論
の違法は認められない。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
最高裁判所第一小法廷
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裁判長裁判官 斎 藤 悠 輔
裁判官 入 江 俊 郎
裁判官 下 飯 坂 潤 夫
裁判官 高 木 常 七
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